2016年01月29日

机の上にコックリさんの表を広げて、代表の4人がそれを囲んで降 霊式を行うのです

601 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:24:27 ID:qwSK61Ft0[1/9回(PC)]
 僕は小学4年生の男子です。 
 僕のクラスでは少し前まで、『コックリさん』がはやっていました。放課 
後、机の上にコックリさんの表を広げて、代表の4人がそれを囲んで降 
霊式を行うのです。4人以外の人たちは、さらにその周りを囲んで降霊 
式の様子を眺めていました。 
 僕は最初、コックリさんなんていないと考えていましたが、4人の指先 
を10円玉に乗せて呪文のようなものを唱えると本当に10円玉が動く 
ので、ビックリしてしまいました。 
 特に上手だったのが直人くんです。指を乗せる4人の中に直人くんが 
いると、10円玉がまるで生き物のように動いて、占いやお告げをしてく 
れるのです。それがまた、よく当たりました。 
 ところが先日、コックリさんをやろうとして集まっていたところを担任の 
山上先生に見つかって、怒られてしまいました。 
「コックリさんは幽霊でも何でもなく、簡単な催眠術のようなものなんだ。 
心の成長がじゅうぶんではない君たちがコックリさんをやったら、心に 
一生残る傷がつくかもしれない。だから、やってはいけないんだ!」 
 山上先生はそう説明すると、僕たちからコックリさんの表を取り上げ 
て、破いてすててしまいました。



602 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:25:17 ID:qwSK61Ft0[2/9回(PC)]
 山上先生は30代半ばの男の先生で、冗談好きの明るい先生です。 
一緒に遊んでくれるし、勉強をよくみてくれるので人気があります。ただ 
女子たちからは、毛深いのがちょっとイヤと言われています。 
 そんな山上先生が、『コックリさんをやってはいけない』とものすごく怒 
ったのです。だけど実際に10円玉が動くのを見た僕たちは、山上先生 
の話に納得できませんでした。 
 その次の日の放課後、僕たちは表をこっそり作り直して、山上先生が 
職員室に戻ったのを確認してからコックリさんを始めたのです。 
 10円玉に指先を置く4人の中に直人くんがいるので、女子たちがいつ 
も以上に集まっていました。直人くんが呪文のようなものを唱えると、10 
円玉はスルスルと動き出しました。 
『や ま が み  ゆ る さ な い』 
 教室がしーんとなってしまいました。みんな、お互いに顔を見合わせて、 
コックリさんが山上先生の事を嫌いになってしまった、どうしようどうしよ 
うと言い始めました。先生に何かタタリが起きるんじゃないかと心配にな 
ってきたのです。僕もだんだんと心配になってきました。 
 直人くんが何だか苦しそうな顔で、どうすれば山上先生を許してくれま 
すかとたずねました。



603 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:27:01 ID:qwSK61Ft0[3/9回(PC)]
『ぜ つ た い に  ゆ る さ な い』 
『や ま が み  こ ろ せ   こ ろ さ な い と  お ま え ら  こ ろ す』 
「山上を殺せ! 殺せ! 山上を殺せ! でなければ、お前らを殺す!」 
 直人くんが突然そう叫び出し、イスを持ち上げて黒板に向かって投げ 
つけました。みんな、何が起こったのかすぐには理解できませんでした。 
 直人くんの顔を覗くと、歯をむき出して口からヨダレをたらしていました。 
 まるで、ケモノか何かになってしまったかのようです。 
 女子たち全員が悲鳴を上げ、体をひとつに寄せあいました。ドアの一 
番近くにいた男子が山上先生を呼んでくると言って、教室を飛び出して 
行きます。 
 直人くんは唸り声を上げながら、先生を殺すとちかわないと、かみ殺 
してやると女子たちにせまりました。女子たちはうずくまり、再び悲鳴を 
上げます。 
 僕は暴れる直人くんを羽交いじめにしようと、直人くんの後ろに回りこ 
みました。後ろからそっと近付こうとしたとき、直人くんは片手で机を持 
ち上げ、後ろを向くと同時に僕に向かってブン投げたのです。 
 机は僕の左側スレスレを通り、後ろにあった水そうに当たりました。ガ 
シャーンとガラスの割れる音がひびき、女子たちがまた悲鳴を上げます。 
水そうの中の金魚たちは床にこぼれ落ちてしまいました。 
 もし机が当たっていたら死んでいたかもしれない。そう思ったら、僕は 
腰を抜かしてその場におしりをついてしまいました。



604 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:28:18 ID:qwSK61Ft0[4/9回(PC)]
 見せしめにお前から殺すと、直人くんが僕の方へ向かってきます。頭 
では逃げなきゃと思うのですが、うまく足に力が入らなくて逃げることが 
できませんでした。 
 ぐるるるぅ~~ がるるるぅ~~ 
 直人くんが唸り声を上げます。もうダメだ、直人くんに殺されると思った 
その時、教室のドアが開きました。山上先生が助けに来てくれたのです。 
「お前たち、教室から出ろ!」 
 山上先生のひと声に弾かれて、僕いがいの全員が教室から逃げ出し 
ました。僕も逃げたかったのですが、まだ足に力が入らないので逃げら 
れませんでした。 
 ドアがピシャリと閉まって、教室の中には山上先生と直人くん、逃げ遅 
れた僕の3人だけとなりました。 
 直人くんが山上先生に飛びかかります。山上先生は素早く伸ばした手 
を直人くんの脇の下に差し入れて、そのまま彼の体を強引に持ち上げ 
ました。 
 直人くんは逃れようと身をよじって暴れますが、山上先生の方が力が 
強く、しかも直人くんの体を両手でガッチリ掴んでいるので、逃れること 
は出来ません。手にかみ付こうとしますが、歯が届きません。 
 しかし足の自由が利くと気付くと、直人くんは山上先生のお腹や胸を 
何度もけり上げました。先生も痛そうに顔をゆがめます。



605 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:30:04 ID:qwSK61Ft0[5/9回(PC)]
「いいかげんにしやがれ…… キツネ野郎ぉ……」 
 小さな声でしたが、山上先生は確かにそう言いました。 
 そして今度は、山上先生が歯をむき出して唸り声を上げたのです。 
 暴れていた直人くんも、それを見ていた僕も息を飲んでしまいました。 
「俺の可愛いガキどもに手ェ出しやがって。あまつさえ、俺を殺せと煽っ 
てくれたそうだな? キツネごときが調子にのるな、喰い殺すぞ……」 
 山上先生は肩をいからせ、ヨダレがたれるのも構わずに犬のような4 
本の太い牙をむき出しにします。 
 ぐるるるるるうぅ~~あぁぁ~~るうぅあぁぁぁ~~ 
 マユをグッと寄せ、怒りに燃えた目を吊り上げて直人くんをにらみつ 
けます。口の周りや鼻の筋に何本ものシワが入って、人相がすっかり 
凶悪に変わっていました。直人くんと向き合っている様子は、まるで2 
匹のケモノが争っているかのようです。 
 助けに来てくれたはずの山上先生までケモノのようになってしまって、 
僕はわけがわからなくなりました。それに先生に牙が生えているなんて、 
このとき初めて知ったのです。 
 直人くんは狂ったように体を激しくよじって、山上先生から逃れようと 
します。しかしそれでも先生の方が力が強く、全くかないませんでした。 
このときの先生の体は、いつもよりひと回り大きくなっていたような気が 
します。



606 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:32:04 ID:qwSK61Ft0[6/9回(PC)]
 るるぅあぁぁ~~ぐぁるるうぅ~~あぁぁおぉぉぁ~~ 
 山上先生は直人くんの体をグイッと引き寄せ、彼の鼻先でにらみつけ 
ながら、さらに唸り声を上げます。にらみ付けられた直人くんは、クゥー 
ン、クゥーンとすっかりおびえた声をもらし、オシッコまでもらしました。 
 そしてついに、山上先生が喰い殺さんばかりの勢いで吼えたのです。 
 ガゥッ!、ガルルウゥゥーッ!!、ガァウゥッ!! 
 教室の窓ガラスがビリビリと震えるほどの低く大きな声に、僕まで震え 
上がってしまいました。 
 直人くんは身震いをして、そのまま気絶しました。そして、口から白い 
煙のようなものを吐いたのでした。 
「まったく、世話の焼けるガキどもだ……」 
 山上先生は直人くんの体を横に両手で抱え上げると、気絶している直 
人くんに優しく笑いかけました。ようやく、いつもの山上先生に戻ってくれ 
たのです。僕も足に力が入るようになったので、立ち上がることができま 
した。 
 すると、山上先生は驚いた顔をして、さっきからそこにいたのかとたず 
ねてきました。今まで気付いてなかったのかなと戸惑いながらもうなずく 
と、山上先生はちょっとテレくさそうな顔をして、ここで見たことはみんな 
にダマってろよと僕にクギをさしました。



607 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:33:49 ID:qwSK61Ft0[7/9回(PC)]
 山上先生が直人くんを保健室へ運んでいくのを見送ったあと、みんな 
で教室を片付けて、金魚たちをお墓に埋めました。 
 片付けている途中、山上先生はどうやって直人くんを正気に戻したの 
かと、みんなから質問ぜめにあってしまいました。先生からはダマってろ 
と言われてましたが、みんなが余りにもしつこいので仕方なく、先生は犬 
の鳴きマネをして直人くんを正気に戻したんだよと教えました。 
 山上先生が戻って来ると、さっそく女子のひとりが犬の鳴きマネをした 
のはどうしてですかとたずねます。先生は苦笑いを浮かべて、約束を破 
った僕の頭を軽く小突きました。痛かったです。 
「コックリさんには、『戌年生まれの人は、コックリさんができない』という 
言い伝えがある。コックリさんの正体はキツネと言われていて、キツネは 
犬が怖い、つまり猟犬が怖いから戌年生まれの人には降りないらしい。 
先生は戌年生まれだから、それを逆手にとって犬の鳴きマネをしたんだ」 
 山上先生から改めてそう説明されると、みんな、感心した声を上げまし 
た。先生からそんなオカルト的な話を聞くとは、思わなかったからです。 
 しかし、そんなみんなに山上先生のカミナリが落ちました。 
「そんなものは直人を正気に戻すために適当にやっただけのことで、意 
味があってやったことではない! 幽霊なんてありもしない物にすがろう 
とするから、おかしくなってしまうんだ。これにこりて、二度とコックリさん 
をやらないように!」



608 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:35:03 ID:qwSK61Ft0[8/9回(PC)]
 このあとも山上先生からタップリしかられて、「これから毎日、放課後は 
小テストの時間にするから覚悟するように」と、言われてしまいました。 
 次の日、直人くんはすっかり元通りになって学校へ来ました。直人くん 
は教室でのことをよく覚えてないそうです。ただ、大暴れしたことは山上 
先生から聞いていて、僕や女子たちに謝っていました。女子たちも最初 
は怖がっていたけど、いつもの直人くんに戻ったと判り、自分たちにも責 
任があるからと謝っていました。僕も謝りました。 
 その日の休み時間、僕は山上先生に呼び止められ、昨日は怖かった 
かとか、昨日のことを突然思い出して怖くなったりすることはあるかとき 
かれました。そんなことはないと答えると、先生はそれなら安心だとニカ 
ッと歯を見せて笑いました。でも、もしそんな風になったら、自分か保健 
室の先生に言えよとアドバイスもしてくれました。 

 僕のクラスで、『コックリさん』をやろうとする人はもういません。話題に 
もしません。まるで、きれいサッパリ忘れてしまったかのようです。 
 ただ、僕にはわからないことがひとつだけ残っていて、今でも忘れられ 
ないでいます。 
 山上先生と直人くんがにらみあっていたとき、先生の口には確かに『犬 
のような4本の太い牙』があったはずのに、次の日に先生がニカッと歯を 
見せて笑ったときには全くありませんでした。



609 :潜水士 ◆MK4bj1r2OY [sage]投稿日:2005/05/17(火) 18:36:52 ID:qwSK61Ft0[9/9回(PC)]
 山上先生の『犬のような太い牙』はどこへ行ってしまったのでしょう? 
 人間のするどくとがった歯のことを『犬歯』と言うんだと、お父さんから 
習いました。人間の『犬歯』って、ネコの爪のように表に出たりひっこん 
だりするものなんですか? だれか教えてください。 
 何となく、山上先生にはきけません…… 
                                       終わり 


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