私はその子が好きだったから恋人になりたいと神社の鈴を勢いよく鳴らしたみちづれ

2016年05月31日

見殺し

19 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2003/06/01 01:22:00
[見殺し] 

ある暑い夜、俺はガールフレンドの朱美とドライブに出かけた。行き当たりばっ 
たりで適当に高速道路から一般道に降り田舎のうす暗い道を走っていた。そこは 
ポツリポツリと農家があるような田舎の県道だった。 

しばらく行くと、緩やかなカーブを曲がりきったところで電柱に激突している車 
に遭遇した。俺たちが車を止めて事故車の中を覗くと、運転席で頭から血を流し 
てグッタリしている男性が見えた。俺たちが呼びかけるとその男性は微かに反応 
を示した。 
俺が車から男の人を引っ張り出そうとし、朱美が携帯で救急車を呼ぼうとしてい 
たとき、いかにも農家のおっちゃんといった格好の中年男性が現れてこう言った。 
「ええよ、儂(わし)が救急車を呼んであげるから、あんたらは早よ行き。あの 
男の人も儂が引っぱり出しといてあげるから」 

俺たちは、少々強引ともいえるおっちゃんに内心感謝しつつ事故現場を後にした。 
その後しばらく車を走らせたが高速の入り口を見つけられず、またもと来た道を 
引き返すことになった。かれこれ事故を見てから3時間は経ち、夜が明けて、あ 
たりはすっかり明るくなっていた。 

先程の事故現場に差し掛かると、あの車が電柱にぶつかったままで、男性も閉じ 
込められたままなのを見て驚いた。脇に軽トラックが止まっていて、もんぺ姿の 
おばちゃんが携帯でどこかに電話しているところだった。 
俺たちが狐につままれたような顔をして佇んでいると、そのおばちゃんが事情を 
説明してくれた。 
「車が電柱にぶつかってドライバーは死んでるみたい。跳ねられた方もだめみた 
いね」 
「えっ、跳ねられた方?」 
俺の声におばちゃんは上の方を指さした。俺たちが指さされた方を見ると、明け 
方にここで話したはずのおっちゃんが、並木の枝に全身から血を滴らせながらぶ 
ら下がっていた。 


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at 11:00│Comments(0)心霊 

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