2016年08月12日
とし君、合格したよ。ほれ、ババの言ったとおりだったろ。とし君は、やれば出来る子なんだすけ
716 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] 投稿日:04/06/15 20:10 ID:W2wVIX6h [1/2回]
高校時代の話。
大学受験を控えていたオレは、日々勉強に明け暮れていた。そんな中、ババが癌に侵されていた。
まぁ、オレはババっ子だった訳だ。ババは入院。オレは勉強。二人で頑張ったよ。
見舞いにも何回も行った。互いに励ましあった。「とし君は出来る子だっけ大丈夫」それが、ババの口癖になっていた。
受験本番の2月。ババの状態は良くなかった。すでに癌は全身に転移していたらしい。
見舞いに幾度にババの状態は悪くなる一方。『永くないかも』と薄々感じていた。
受験はすべり止めの大学を受けたが、不合格だった。
それでも、ババは「大丈夫、大丈夫。とし君は出来る子だから」と。
ある日、東京へ第2志望校の受験を済ませ新潟に帰ってきた。家に着くとババがいる。「退院してきた」と母。
状態が良くなった訳でなく父からこう告げられた。
「お前が帰ってくる前に病院から電話があってな。今夜がヤマらしいんだ。婆ちゃんが、前から家に帰りたがっていたからな。連れて帰って来たんだ。」と。
ババと少し話をしたかったが、ババも眠っていたしオレも受験の疲れで眠く、その日はそのまま部屋で眠りについた。
717 : 716[sage] 投稿日:04/06/15 20:11 ID:W2wVIX6h [2/2回]
翌朝、母の声で目が覚める。「とし!起きて、早く来て」
階段を駆け下る。「母さん、母さん!しっかりして」
ババを見ると血を吐いており、意識も薄いみたいだった。
オレは、掛ける言葉が見つからずババの手を握りしめた。
薄らとババの目が開き、口を開く。何かを言いたそうだが声が小さく聞き取れない。
「ババ?なんだよ?何だって?」
「・・だよ。としく・・・」
そのまま、ババの口も目も開く事はなかった。
その日の夜、親戚が集まって通夜やら葬式の段取りをする。オレは通夜にも葬式にも出るつもりだった。
しかし、第一志望校の受験日と葬式の日がどうしても重なると言う。
(今回も東京へ受験をしに行かなければならず、受験出発の日に通夜。受験の日に葬式をする)
受験を受けずに葬式に出ようと思っていた。
しかし、「死ぬまぎわまで、お前のことを心配していたんだ。受験を受けるのがババに取って一番だ」と父。
受験に行くのを決めた。
その日の夜、同じ部屋でババと寝る。翌朝、ババに手を合わせ東京に向かった。
合否の通知が来る前夜、夢を見た。ババの夢だった。
周りはぼんやりと白い光に包まれていた。
向こうからババがやって来て、手を振る。
「とし君、合格したよ。ほれ、ババの言ったとおりだったろ。とし君は、やれば出来る子なんだすけ」
ふと目が覚める。郵便受けがカタンと響く。ブロロロローとバイクの走り去る音。
下へ降りると母が、一通の封筒を手にしていた。
封筒を破り、受験番号と照らし合わせる。
・・・合格。
世の中には不思議な話があるもんだ。
at 13:00│Comments(0)│心霊