2015年05月23日
のび太植物人間説
1990年代の終わりごろから「ドラえもんの最終回」と称する事実無根のチェーンメールが出回り始めた。
その中でも最も有名なのが
「のび太植物人間説」と「ドラえもんの開発者はのび太説」の2つである。
・のび太植物人間説
もとは1986年秋頃に子供たちの間で流行した噂であり、
「ドラえもんは、交通事故にあって植物状態となったのび太が見ていた夢」という内容である。
「この噂は本当か」と、『ドラえもん』連載学年誌の出版元である小学館に問い合わせが相次いだため、作者の藤本弘(当時は藤子不二雄コンビ解消前)が正式に
「ドラえもんはそのような突然で不幸な終わり方にはしない」
とするコメントを発表する事態となった。
藤本がこの年の夏病気で入院したため、このような噂が生まれたと考えられる。
その後出回ったチェーンメールでは内容が追加されており、
「ある日、事故にあって植物人間状態になったのび太を、ドラえもんがどこでもドアを使いのび太をおぶって天国へと連れて行く」
というものや、
「実はのび太は心身障害者で、ドラえもんは彼による作り話(妄想・羨望といった派生型あり)」
といったものもある。
また、同じ植物状態説でも
「動かないのび太にドラえもんが自分の全エネルギーを与え、自身の命と引き換えに助けた。その後、のび太が停止したドラえもんを抱きしめ、泣きながら『ドラえもーん』と叫ぶと、垂れた涙がドラえもんに当たった瞬間にドラえもんが復活し、エンディングテーマが流れスタッフロールが出てきてフィナーレ」
というハッピーエンドになるものもある。
このエピソードは1991年にアニメ化された『丸出だめ夫』の最終回ほぼそのままの話である。
ちなみにこのエピソードに関して作者の娘が作者に訪ねたところ、藤子は
「ドラえもんはそんな終わり方をしない、もっと楽しい終わり方にする」
と、コメントした。
・ドラえもんの開発者はのび太説
これは、1人のドラえもんファンが「自作の最終回」と明記した上で作成したオリジナルストーリーが、チェーンメールなどにより一人歩きしたものである。
「電池切れ説」とも呼ばれる。
ある日突然ドラえもんが動かなくなってしまった。
未来の世界からドラミを呼んで原因を調べたところ、バッテリー切れが原因だと分かった。
のび太はバッテリーを換えてもらおうとするが、このままバッテリーを換えるとドラえもんの記憶が消えてしまうとドラミから聞かされる。
ドラえもんなどの旧式のネコ型ロボットのバックアップ用記憶メモリーは耳に内蔵されているが、ドラえもんは既に耳を失っていたので、バッテリーを交換してしまえばのび太と過ごした日々を完全に消去してしまうことになる。
バックアップを取ろうにも方法が分からず、開発者を呼ぼうとするも設計開発者の情報はわけあって絶対に開示されない超重要機密事項となっていた。
のび太は迷った末、とりあえずドラえもんを押入れにしまい込み、皆には
「ドラえもんは未来へ帰った」と説明。
しかし、ドラえもんのいない生活に耐えられず、猛勉強をしてトップクラスのロボット工学者に成長する。
工学者になってからしずかと結婚したのび太は、ある日妻となったしずかの目の前で、努力の末に記憶メモリーを維持したままで修理完了したドラえもんのスイッチを入れる。
ドラえもんがいつものように
「のび太君、宿題終わったのかい?」と言い復活する。
ドラえもんの製作者が明かされていなかったのは、開発者がのび太自身だからだった。
以上があらすじであるが、
「のび太は15歳で海外に留学した(飛び級で大学に入ったとすることもある)」、「修理には妻となったしずかが立ち会った」などと脚色されている場合もある。
・チェーンメール化・都市伝説化
上記オリジナルストーリーの内容は、その後チェーンメールとして広まった。
オリジナルストーリー作者は、この話がドラえもん最終話として一人歩きすることは全く望んでいなかったらしく、チェーンメール化されていることを知った彼は、自身のページに
「このページの文を勝手に引用しないように」
「私の知らないところで話が一人歩きしていることに恐怖を覚えている」旨のコメントを添えていた。
さらにその後
「チェーンメールはまことしやかに流布され、原作に対する権利の侵害、熱心なファンに対する冒涜であり、このような騒ぎになったのは私の責任」だとし、サイトを閉鎖した。
ただしその後もチェーンメールは真実の確認がなされぬまま流され続けた。
鈴木蘭々などのドラえもんファンのタレントが、深夜番組などで
「最終回は――(のび太発明者説)なんだって」などと語ったこともあり、広範囲に流布した。
一部ではこれを真の最終回だと誤解した人もいたという。
オリジナルストーリー作者は、チェーンメール化により非難を受けるなど、非常にナーバスになっていたこともあったとのことである。
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